IV — INSIGHTS
グループ サステナビリティ委員会2025-12

百年企業は、カーボンニュートラルをどう考えるか

Carbon as a Century-Scale Question

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1925 年に由来するファミリーホールディングスグループにとって、カーボンニュートラルとは、まず年ごとに着実に履行していくべきロードマップにあたります。2030 年のコミットメントは、今このときから四半期ごとに具体的な進捗があることを意味します。京都生命科学研究所の低炭素プロセス、四拠点のオフィス空間における再生可能エネルギーへの転換、そしてコア原料パートナーとのサプライチェーン協働設計 ── この 3 つの取り組みが、次の 100 年に対する当グループの具体的な回答を形作っています。

コミットメントの背後にあるロードマップ

2030 年カーボンニュートラルは、当グループが対外的に公表しているコミットメントです。けれども、当グループの内部にとって、それはまず、毎年毎四半期にいたるまで詳細に記された一枚のロードマップとして立ち現れます。コミットメントそのものは、ロードマップの最後の一行にすぎません。その手前には、何千もの技術ノード、予算ノード、責任所管ノードを揃えていく作業があります。当グループのサステナビリティ委員会の 2025 年度の中核業務は、まさにこのロードマップを、原則的な表明から、さらに踏み込んで実行可能なオペレーションリストへと落とし込むことでした。CO₂ 削減ノードのひとつひとつには、明確な所管部署、明確な計測基準、明確な失敗時の回復策が伴っています。「カーボンニュートラル」ということばに対する当グループの慎重さは、過去 10 年にわたるこの語の濫用に対する観察に由来します。一世紀を歩んできたホールディングスグループは、自らの未来の信用を、希薄化した概念に賭けるわけにはまいりません。

京都研究所の低炭素プロセス

京都生命科学研究所の低炭素プロセスへの改造は、当グループの 2030 年ロードマップの中で、もっとも技術的に深い経路となる一区間です。研究所のエネルギー消費構造は、伝統的には、実験工程における高温処理、コールドチェーン保管、長時間運転される精密機器を中心としていました。過去 3 年、研究所は主要な実験工程の低炭素再構築を完了いたしました。高温処理は循環熱回収システムへと改められ、コールドチェーン保管にはセグメント別温度管理を導入して空運転のエネルギー消費を削減し、精密機器の待機戦略は「常時待機」から「必要時起動」へと調整されました。改造後、研究所における 1 実験あたりのエネルギー消費は顕著に低下しましたが、それ以上に重要な成果は、この改造が同時に実験環境の安定性をも向上させたことにあります。低炭素と科学的厳密性が、この事例では同じひとつのことを指し示しています。研究所は、今後 5 年のうちにこの低炭素プロセスの経験を、当グループの他の技術施設へと段階的に展開してまいります。あわせて、改造の失敗経験と成功経験を社内ホワイトペーパーとして整理し、グループ全体の施設間改造の参考といたします。

サプライチェーン協働設計:技術よりも難しいこと

単一の企業の内部での CO₂ 削減は、カーボンフットプリントのごく一部しか解決できません。本当に難しいのは、サプライチェーン側の CO₂ 削減です。原料サプライヤー、処方の共同開発パートナー、包装サプライヤー、物流サービサー。それぞれの段階に、独立した企業の意思決定が関わっています。当グループは 2025 年に、「サプライチェーン協働設計」の仕組みを正式に立ち上げました。処方研究開発の初期段階から、コア原料パートナーに低炭素計算へ参画していただき、CO₂ 削減目標を処方設計そのものへと前倒しすることで、処方確定後に「環境にやさしい代替品」を探すという事態を回避いたします。この仕組みの執行難度は、技術改造をはるかに上回ります。サプライパートナーとの協働ロジックを再構築すること、もとはセンシティブであるコスト構造データを互いに共有すること、複数年にわたって継続的に校正していくこと、それらが必要となります。けれどもこれこそが、1925 年に由来するホールディングスグループが担うべき仕事です。難しい事を長く続けること、長く続けてきた事を、なお深く根付かせていくこと、です。

30 年の時間尺度:百年企業の思考の仕方

2030 年カーボンニュートラルは、ひとつのアンカーポイントにすぎません。当グループのサステナビリティ委員会は、内部での議論において、つねに 30 年という時間尺度の中に業務を置いてまいりました。30 年は、技術経路の度重なるイテレーションを包み込むことのできる、十分に長い尺度です。同時に、一世代の研究員、一世代のマネジメント層が、完全に体験しきることのできる、十分に具体的な尺度でもあります。私たちは、本日設計した CO₂ 削減施策が、30 年のうちに完全に変わらず保たれるとは考えておりません。技術は進歩いたしますし、プロセスも更新されます。社会の「サステナビリティ」に対する定義もまた、進化してまいります。けれども、本日打ち立てた業務の原則が、30 年後にもなお立っていてほしいと、私たちは願っております。透明であること、監査可能であること、対外的な物語を作るのではなく、真の問題の解決を優先すること、難しい事をやり抜くこと、です。当グループが 1925 年の起源から今日まで歩んでまいりましたのは、これらの原則が代々受け継がれてきたからです。次の 30 年、さらにはより長い時間の刻みにおいても、これらの原則は当グループの業務の最も底にあるコードであり続けてまいります。カーボンニュートラルは、これらの原則が、今この時代において具体的に表現された、ひとつの形にすぎません。